こたつむり

イカリエ-XB1のこたつむりのレビュー・感想・評価

イカリエ-XB1(1963年製作の映画)
3.3
♪ 月は銀河に浮かぶ小島
  白くかがやく船で行く

うわ。とても懐かしい。
…と思ったのは、本作の舞台である宇宙船の内部が『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』を彷彿させる感じだったから。

無機質で、やたらと電子的。
本作はモノクロ映画ですけど、確実に銀色に塗っているだろう…と思わせる佇まい。

でも、それも当然の話でした。
本作は1963年の作品。話によると様々なSFに影響を及ぼした作品だそうで。なるほど。本作が元祖であり、本家でもあるんですね。

しかも、製作はチェコスロバキア。
確かに当時の“東側”はアメリカと科学技術で競っていたので、ハリウッドを凌駕するSFがあっても不思議ではないんですけどね。ちなみに“ロボット”の由来もチェコ語だとか。SF的素養が強いお国柄だったんですね。納得です。

さて、本作の内容ですが。
少し先の未来、宇宙船イカリエ-XB1に乗ってアルファ・ケンタウリに生命探査しに行く…というシンプルなプロット。基本的には宇宙船の中だけで完結する物語。

となると重要なのは人間関係。
狭い宇宙船の中ですからね。距離が近くなれば人間関係も濃くなる…筈なんですが、なんと積載人数は1200人。大きな小学校(40人×5クラス×6学年)と同じ。

しかも、主要人物を紹介する…なんて配慮は皆無。名前と顔が一致しないから、なかなか前のめりになれません。ある意味でリアリティ溢れる演出なんですけども、僕みたいな軟弱者には少しハードルが高いですな。

ただ、冒頭で“謎”を提示し、そこに向かっていく展開はサスペンス風味が溢れていたので、昨今のSF映画と対比しながら鑑賞すれば問題なし。

まあ、そんなわけで。
SF好きとして、歴史を紐解くように臨めば楽しめる作品。放射能を悪者扱いするとか、20世紀は悪の時代と評するとか、当時の空気感も勉強になります。
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