のんchan

スペシャリスト 自覚なき殺戮者ののんchanのレビュー・感想・評価

4.1
いつかは観たいと思っていた裁判ドキュメンタリー‼️
あのユダヤ人大量殺戮の指示者アドルフ・アイヒマン裁判である。

『ハンナ・アーレント』『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』の中にもこの実録裁判が一部チラッと出ている。
裁判は膨大な日時を費やしたが、それをビデオテープ350時間に渡って収めてあるアーカイブから2時間に編集したものである。


場所はイェルサレムの裁判所。
第7回公判の開始から映している。

検察官は言う。
「大量殺戮を行った人類の敵。人でありながら密林の野獣に等しい。言葉に出来ぬ残虐行為に加担した人物、これでも人間なのでしょうか...死刑を求刑します❗️」

様々な事実を記録し纏めた資料は、厚いハローページ(電話帳だと知っている人は少なくなっているかしら💦)が何十冊にもなりそうな。それを当然ながら裁判長と検察官、アイヒマン側弁護士(一切逆らわない)が一つ一つ確認しながら気の遠くなる作業を続けていく。

アイヒマンは"スペシャリスト"と呼ばれ普通のスーツ姿で、冷静で誠実、真面目な紳士にも見える。厚いメガネの奥の瞳は鋭いし、頭脳はコンピュータを上回るのでは?と言うイメージ。
何を問われても返す言葉はあくまでも「自分は命令されただけ❗️」😖

アイヒマンは冷静に言う。
「私は性格上、従順でおとなしく目立ちません...
全て命令によるものです...
時代の問題だったと思います。
忠実なる愛国心からです。
ヒムラーが直接命令しました。
意に反した行為で命令に従わされたのです。
私はいかなる場合でも義務を果たした...」

いちいち頭にくる返答だったが、途中からは口が左上にひん曲がり、苦虫を噛み潰したとは正にこの表情だわ!いう様子も見せている。

何十日も何百時間もこの態度を変えず、とうとう最後には有罪と自ら認めたのだが...


哲学者ハンナ・アーレントは彼を『凡庸な悪』と評した。

百聞は一見にしかずです。
何百冊の本を読むよりも、この映画を一本観るのがアドルフ・アイヒマンを理解できる。

アイヒマンは実直で繊細で有能だが、血の通っていない冷たい官僚。世界一凶悪な大量殺人を犯した人物なのだ😖それを示している貴重な実録でした。
のんchan

のんchan