さいとぅおんぶりー

おとし穴のさいとぅおんぶりーのレビュー・感想・評価

おとし穴(1962年製作の映画)
4.5
一つの殺人事件から派生して人間の持つ業を推進力として展開されてく不条理喜劇。
物語りが後半に向かうにつれ登場人物それぞれの見る異なる真実が同一の画面で展開されてくのが見応え抜群で唸ってしまう、その中で唯一子供の視点のみが事象をフラットに捉えてたのも素晴らしかった。

ドッペルゲンガーやら死者やらが登場する奇妙な物語に説得力を持たせるセットと絵作りも流石。前半の輪廻転生の話で「生まれ変わってもどうせ地獄だから鬼に生まれ変わった方が住みやすい」という話からしても田中邦衛は鬼の生まれ変わりといったところだろう、そしてこの世は生者も死者も入り混じる煉獄なのだ。ラストに至るまで果てしなく伽藍堂で死者が溢れる無常の世界が広がり続けていた怪作。