こたつむり

サンシャイン・クリーニングのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.3
♪ 何かに怯えてた夜を
  思い出すのが非道く怖い
  ねぇ 私は上手に笑えてる?

親から子供に与えるもので最も重要なもの。
それは財産でも権力でもなく“自己肯定感”だと思います。莫大な遺産を受け継いだところで、それを活用できなければハゲタカに食い尽くされるのが関の山ですからね。

そして、それを根付かせるのは自分の責任。
鳥の食事だって同じですよね。口を開けていればエサはもらえますが、咀嚼するのは自分自身。生きることには真剣に向かい合わないといけません。

本作はそれが欠落した姉妹の物語。
ハイスクールの頃の栄光にしがみ付く姉。
幼き頃に母親を失い、それを引き摺る妹。
陽の光は注いでも自分は深海に沈んでいく…そんな人生。

その二人を演じたのがエイミー・アダムスとエミリー・ブラント。さり気なく豪華絢爛な布陣ですよね。ゆったりとしたノリも悪くないし、根底に流れる“やさしさ”も心地よいのですが…。

少しだけ、いや、割と物足りない作品でした。
思うに主人公の二人の魅力を監督さん(あるいは脚本)が引き出せていないんですよね。

だから、彼女たちが日常でもがいても。
なんだか“自業自得”のような気がして、寄り添うことが出来ないのです。

人生ままならないのは誰だって同じ。
それを承知で前を向くのか、歩もうとする意志はあるのに徹底的に甚振られるのか。そんな描写が欲しいのですが、どこまでも中途半端。やはり“やさしさ”だけではダメなのでしょう。

ただ、これは僕が日本人だから感じたことかも。欧米の価値観は自己主張が先に来ますからね。自分を変えるという考えの前に「周囲が悪い」と攻撃的になるのが自衛のコツかもしれませんし、その辺りは僕には分かりません。

まあ、そんなわけで。
『リトル・ミス・サンシャイン』のチームが作った作品…という触れ込みですが、監督・脚本・撮影スタッフは違うそうです。って、それは完全に別物じゃないですか?むー。
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