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勝手にしやがれ!! 黄金計画のnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.2
 七輪の網の上に置かれた秋刀魚、炊きたてのご飯、ちゃぶ台に置かれたビールをくいっと飲み干す雄次(哀川翔)を耕作(前田耕陽)がいつものママチャリで迎えに来る。2人は河岸を疾走し、街の方へ。手配師の由美子(洞口依子)から、ある老人を捜し出してほしいという依頼を受けた雄次と耕作は、難無くその老人・波多野(天本英世)を見つけ出すが、逃亡を試みた波多野は心不全で急死してしまう。依頼主の西(諏訪太朗)と猫島(三上剛史)は激怒し、雄次と耕作は調査費を貰い損ねた。しかし、波多野がいた老人ホームから彼の遺品を引き取ってくれとの連絡を受けた雄次は、年代もののワーゲンを手に入れ、すっかり気に入った様子だった。そこへ、車を返せという波多野の孫娘・律子(藤谷美紀)が現れる。耕作と仲良くなった律子はふたりのそばをウロチョロしだすが、彼女には他人の物を勝手に売ってしまう困った癖があることがわかり、雄次は次第に彼女を煙たく思いはじめた。数日後、西と猫島が今度は20万円で律子捜しを依頼してきた。しかし、律子が波多野老人から宝の地図を預かっていること、波多野老人が10年前の5000万円強奪事件の犯人のひとりであることなどを知った雄次と耕作は、逆に事件の共犯者である西と猫島をゆすることを計画する。しかし、西と猫島が別件で逮捕されたことから、5000万円を巡る事態は警察も加わった三つ巴の強奪合戦へと発展する。

  哀川翔と前田耕陽の凸凹コンビの珍道中を描いたVシネマ『勝手にしやがれ!!』シリーズ第三弾。雄次は住みなれた部屋を引っ越すが、2人の関係性は変わらない。今作では律子が赤いワーゲンを取り返しに訪れたところから、宝探しの三つ巴のゲームが幕を開ける。律子、雄次と耕作の2人っきりの場面には互いの差異が強烈に現れている。哀川翔と彼女の2人っきりの場面では、19歳の構ってほしい年頃の少女に対して、まるで彼女がそこにいないかのように、車の修理に黙々と励む哀川翔の姿を長回しで切り取る。床に寝そべっている藤谷美紀が、哀川翔の動きに対し、触れるか触れないかスレスレのアクションを見せるものの、哀川はそんな彼女の姿を気にも留めていない。その姿に耐えられなかったのか、彼女は哀川翔のアジトを無言で出て行く。一方、前田耕陽と藤谷美紀の2人っきりの場面では、哀川翔よりもダイレクトに想いを伝える前田耕陽の姿が、実に意外に映る。あらゆることを一緒に体験したいという彼女に対し、前田耕陽の物言いは、実にストレートで官能的な愛情に満ちている。5000万円見つけたら、ジャマイカのスタジオでレコーディングしたいと夢をあっけらかんと口にする藤谷美紀は、哀川翔のアジトでオリジナルのピクニック・ソングを高らかに歌う。今作は黒沢清久しぶりの「歌う映画」としての側面も持つ。

 今作における物語の終着地点も、宝のありかに設定される。そこにむらがる男たちは、諏訪太朗と三上剛史だけではなく、汚職警官である大鷹明良をも巻き込み、華麗な「追いかけっこ」の火蓋が切って落とされる。各々の人物たちの行動は極端にディフォルメされ、森の中の「追いかけっこ」は苛烈を極める。ここで追われる側が急に追う側に転じ、逆に追う側が追われる側に転じる様子が実に滑稽でおかしい。丸腰の主人公たちは、このような形でしか抵抗する術がない。そのお遊戯的なアクションが、まるで『893タクシー』の時のように、実に痛快な映画的快楽に満ちている。
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