eulogist2001

秋の理由のeulogist2001のレビュー・感想・評価

秋の理由(2015年製作の映画)
3.6
編集者として秋を迎えた男。もう六十歳くらいだろうか。そして一度は名を馳せながらも書けなくなり、精神的に追い込まれたのか声まで出なくなった初老の作家。編集者はしかし友人でもある作家を信じて再起を辛抱強く待つ。

人生の秋を迎えた二人の風景を描く。
けして枯れたわけでもなく、かと言って強い熱情はもうない。信念と誠意あるいは諦念と不安がないまぜの日々。

旅をして長い列の後ろに並んで、誰かが泣いているために秋が来たわけではない事を知った。文学的な台詞や詩的な映像の中、ストーリーだけではなく秋色の深みを持った心情も丁寧に映し込まれている。

蛇足ながら妻に詰られ書棚から本をぶちまけらるシーンで、その中に背表紙しか写り込んではいないけれど、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」があったのはなんとも言えない懐かさを覚えた。その昔、文学好きの大学生としては遅まきながらも心から文学の力を思い知った作品だったので。
eulogist2001

eulogist2001