HAYATO

不思議惑星キン・ザ・ザのHAYATOのレビュー・感想・評価

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)
3.6
2024年88本目
ソ連で1570万人もの驚異的な観客を動員したカルト映画
不思議な惑星にワープした地球人の奮闘を描く脱力系SFコメディ
妻に頼まれて買いものに出た建築技師のマシコフは、学生のゲテバンと共に別の惑星から来たという不審な男と出会う。異星人など信じられないマシコフがその男の持っていた装置のボタンを押すと、次の瞬間、なんと2人は地球から遠く離れたキン・ザ・ザ星雲のプリュク星へとワープしてしまったのだった。
ソ連で絶大な人気を誇ったゲオルギー・ダネリヤが監督を務めた。同監督が1975年に製作した『AFONYA』は、当時のソ連人口のおよそ半分を動員したそうでめっちゃ見てみたいのだが、日本では劇場未公開、輸入された形跡もないらしくて残念だ。
ゲデバン役のレヴァン・ガブリアゼは、ゲオルギー・ダネリヤと共同で脚本を手がけたレバズ・ガブリアゼの息子であり、現在は『アンフレンデッド』を手掛けるなど、映画監督としても活動している。
冒頭から意表を突かれるのがその場面転換の早さ。マシコフとゲデバンがプリュク星へ飛ばされるのに普通の映画ならもう少し時間をかけそうだけど、本作での星の移動はあまりに一瞬。
プリュク星の住民は地球人と同じ見た目をしているが、ほとんどの会話を「クー」という発声で成り立たせたり、鼻の下に鈴をつけたり、地球のマッチが高級品だったりと不思議で変わった文化を持っており、彼らの予測不能な言動がシュールなユーモアをもたらす。
中盤ではご親切にプリュク星の言語についての説明コーナーが設けられる。個人的には宇宙船を意味する「ペペラッツ」の語感がお気に入り。
ソビエトの厳しい検閲を通り抜けた本作で散見されるディストピア的な表現は、当時の政治体制を皮肉めいた視点で風刺したと評されているそうだ。
これまた普通の映画ならドラマチックに描くはずの「地球への帰還」というクライマックスもめちゃくちゃあっさり描かれていて、終始個性的でやりたい放題だったなあと思わず笑みが溢れてしまういい意味でくだらない作品だった。
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