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SOMEWHEREのtaatのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
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感情表現のセリフが少なく、とことん映像やモチーフでキャラクターの心情を見せる。

視聴者としては、淡々と進む日々の描写にどこか空虚さを感じる。

一方、娘とプールで遊ぶ場面は本当に綺麗で、主人公がどんなに金を手にしても満たされないものが、そこに描かれる。

「傍にいてやれなくてごめん。」
と別れ際に告げるシーンでは、それまでほとんどセリフとしては表現されなかった彼のやるせなさがたった一言に溢れ出る。
とても印象的なシーンだ。

富や名声を持ちながら、その生活に空虚さを感じさせる演出はソフィア・コッポラが持つ特技だと思う。

本作でも、主人公のセレブリティとしての暮らしぶりには抜かりがない。

成金感が無いというか、隅々までお金がかかっているのにすごく自然体にそこで暮らしている感じがする。

逆にいえば、彼は無意識なうちに生活の大部分をお金や富に頼って生きているとも言える。

ラストシーンで彼は自らの空虚さを自覚して、それまでの生活に区切りをつけようとする。

それは彼が思っているよりずっと大変なものであるだろうし、その分、彼の空虚さの根が深いことを表している。
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