まーしー

失楽園のまーしーのレビュー・感想・評価

失楽園(1997年製作の映画)
3.5
改めて概要を書くまでもないだろう。不倫を描いた作品と言えばコレ。
役所広司と黒木瞳のW不倫とその顛末を描いた衝撃作。
まさか世間が不倫で盛り上がっている中でレビューする事になるとは……。

ただ、この作品を鑑賞して思った。心に隙間があるから不倫を行うのだ、と。
役所広司が演じる久木は、仕事も左遷され、家庭にも十分な居場所がない。一昔前の、仕事一徹の男性の典型的な姿。
黒木瞳が演じる凛子も、子どもがいないうえ、夫も淡泊。この男性優位な家庭の姿にも、昭和以前の香りがする。
両者に共通するのは、日々の生活、引いては残りの人生への刺激の少なさだろう。

そんな時に、もし素敵な異性と出会ってしまったら——。
例えば、美人で気品ある凛子を見かけたら、多くの男性は胸がときめくのだろう。
そして、ベッドで凛子にあの恍惚な表情を見せられたら、多くの男性は虜になるのだろう。
本来なら理性が働くところ、心に隙間がある故、恋愛感情と愛欲が入り込むのだと思った。
劇中、主演二人がお互いを「エッチでバランスが悪い」と評していたが、その通りかも知れない。

本作は過激な性描写が話題となったが、個人的には、それ以上に不倫の代償が印象に残った。
これまで積み上げてきた財産が、脆く儚く崩れていく。
そのような末路は想像つきそうなものだが、恋は盲目なのだろう。

時代が変わった今でも、形を変え、不倫は当人たちを奈落の底へと突き落す。
仕事一筋だったのに窓際職場に追いやられた久木と、家庭で意見を言うことを許されない凛子に同情するところもあるが、やはり不倫は良くない。
言い訳も開き直りも許されない。そう強く思った。