ぐっない

海がきこえるのぐっないのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
5.0
監督・プロデューサーのティーチイン付き上映にて。

最初からなんだかずっと泣きそうだった。喉の奥がきゅっとして、手の甲に爪を突き立てながら観てたいた。
杜崎が松野に対して感じている諸々が、くるしすぎて。よくわかる。「女なんぞにお前の良さはわかりゃせん」という台詞。
里伽子、ムカつく人がいるのも分かるけど、私はなんか、可愛いなあと思った。がんばって生きてるんだなと。望まぬ形で東京から高知へ越してきて、よくわからない方言を喋っている人達に囲まれて、東京ではお父さんが違う女の人と暮らしてて、いっぱいいっぱいだったんだろうなあ。
みんなぜんぜん下手くそでいいな。そんなかんじでいいよ。動き回ってるけど、ぜんぜんなんにもできあがってなくて。
彼らの日々が美しくて、大学生になった彼らを想像して、まぶしかった。失恋してすぐの心にささりすぎて、なんだかずっと泣きそうだった。私のこれもきっと、数年後ふと「大学生の頃のきらきらした思い出だなー」って思い出してるんだろうなって、その時の私は笑ってる気がして、なんだかそれが悲しくて嬉しくてくるしかった。
なにも完成しないまま、なにも到達しないまま、不格好なまま。それでこんな美しいならいいやって思っちゃうよ。
監督の言葉がすごく心に残った。「ジブリにあるような色々な主義主張はこの映画にはないです。ただ、青春をすごした彼らの日々を、そのままに描こうと思っただけです」というようなことを言っていて、ぐっときた。
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