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ヌードの夜/愛は惜しみなく奪うのkouのレビュー・感想・評価

3.0
《美しく儚い女性》

石井隆監督、竹中直人主演。1993年に作られた「ヌードの夜」の続編。前回、複雑な愛情を持った女をなくした紅次郎がどんな生活をして、どんな思いでいたのかということがわかるとともに、前作からの世界観がしっかり引き継がれていてファンにとっては嬉しい内容になっている。また、新たなヒロインである「れん」というキャラクターの魅力に溢れた作品だった。

正直、石井隆監督作に慣れていないこともあるのだが、所々違和感が残ってしまう作品でもあった。演技や演出が過剰すぎな感じも受けたし、説明過多な台詞も躓く原因になってしまった。シーンも助長に感じてしまう部分も沢山あった。やはり、作品の世界観に乗れなかったのが一番の原因だったと思う。他の石井作品もフォローしてみるとまた違うかもしれない。

ただ、誰もが認めることだと思うが、「れん」演じる佐藤寛子の体を張った演技は本当に素晴らしく、そのヌードの美しさはそれだけでこの映画を見る価値があると断言できる。美しく、それでいて幸薄な女性というのはなんでここまで惹きつけられるものがあるのだろうか。彼女の演技と元々の素質から放たれる魅力が素晴らしかった。

男というのはとても愚かな生き物だなと改めて思う。暴力的な自分の欲望のために残酷なことをしていく。その内容は前作から引き継がれている部分だ。そんな世界を見てきた紅次郎が受動的になっていて、ほとんどヒロインから言われるがままになっているというのが面白い部分だと思った。彼の傷が癒えていないからなのだろう。

思い返してみて、やはり特別な印象の残る映画だと思う。他の石井作品を見てみてから、また見なおしてみたいと思った。
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