りょう

アメリカン・ハッスルのりょうのレビュー・感想・評価

アメリカン・ハッスル(2013年製作の映画)
3.6
 デヴィッド・O・ラッセル監督は、それなりに知名度があるのに意外と寡作です。個人的には初期の出世作である「スリー・キングス」が好きな程度で、結構スルーしてしまいがちでした。この作品も2014年ころに観ていたはずですが、ほとんど記憶していませんでした。
 演出や撮影に奇抜なところはなく、オーソドックスな描写で展開しますが、あらためて観ると主要な5人の俳優のキャラが際立っています。エイミー・アダムスはほぼ反則技の衣装ばかりだし、ジェニファー・ローレンスはとりわけ後半のぶっ飛び具合がすばらしく、でも間違っても恋人になりたいタイプの女性たちではない強烈な個性です。ブラッドリー・クーパーは妙に自信過剰で自己中心的な態度の捜査官(俗にいうイヤな奴)が秀逸でした。
 クリスチャン・ベイルは、2018年の「バイス」でもそうですが、こんなに増量してまで演じることに共感できません。あくまで自発的なものでしょうが、俳優にも自身のパーソナリティと健康を保持する権利があるはずです。ここまで本来の身躰とかけ離れた役柄でキャスティングする業界にも問題があります。
 ロバート・デ・ニーロはエンドロールにクレジットされておらず、ほぼ1シーンのみの出演でしたが、かなり重要な役柄で、彼の想定外の言動に全員が凍りつく場面は圧巻でした。長年にわたって演じてきた役柄に裏付けられた凄味が収斂しています。
 クラシックなPOPミュージックのBGMが多用されて少し耳障りな箇所もありますが、何気にシーンに溶けこませてあるので、「グッド・フェローズ」のような嫌悪感はありませんでした。
 詐欺師がFBIのおとり捜査に加担させられて政治家を罠にはめるというプロットは、それほど斬新なものでもなく、終盤の展開にも“騙された”感が希薄ですが、豪華な俳優陣の演技で(とりわけ2人の女優の力技で)物語をひっぱっています。
りょう

りょう