華麗なる加齢臭

ラスト・シャンハイの華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

ラスト・シャンハイ(2012年製作の映画)
3.9
【ゴッドファーザーにはなれず】
戦前の上海は金融都市であり治外法権の「租界」で構成され、日本人を含め多くの人を魅了した「東洋のパリ」、そして不安定な国際情勢を反映し様々な特務機関やマフィアが暗躍する「魔都」とも呼ばれた。

その時代の上海を舞台にした、作品だが、かなりの予算をかけただろう上海の街並みや雰囲気の高い再現性は見事であった。
また、チョウ・ユンファ演じる上海マフィアのボス、チェン・ダーチーの半生を織り交ぜながらのストーリーも悪くはなかった。

ご存知の様に、日本は1937年に上海に武力侵攻した。つまり侵略者であり、中国人にとっては「悪者」として描かれるのは、至極当然だ。
ましてや、この作品の製作年は2012年、中国ではデモ隊が暴徒化し大規模な破壊・略奪行為をする大規模は反日デモがあった年だ。

故に、日本軍は人格のない、悪者として描かれる。そして同様に共産党に対峙していた中国国民党軍も人格のない悪者の扱いだ。なるほど、現在の中共にとっては国民党軍は侵略者の日本軍と同格の悪者なのかと理解した。

ヤクザ映画だろうが、戦争映画、あるいはクライムストーリーであっても、対立する一方のみを描き、相手について殆ど描けない映画は単純明快で、勧善懲悪の快感を得られるだろうが、深みはない。

ゴッドファーザーや仁義なきい戦い、さらに一連のスコティシュ作品は、感情移入はできなくとも裏切る者の心情描写や背景をある程度は触れてくれる。ゆえに「おもしろい作品」となる。勧善懲悪で語れるほど世の中は単純じゃないので当たり前と言えば当たり前だ。