競馬というモチーフがすごく印象的。
今まであまり映画作品に登場してこなかったのが不思議なくらいだ。
馬がただ走って、回って、元の位置に戻ってくる。
観客は、生い立ちとか、血とか、その日の様子とかを見て、レースの行く先を予想する。
そして馬たちが、ただ行って帰ってくる様子に感動する。
それはまるで、映画と観客そのものみたいだと思える。
前半のパートで、やたら登場人物たちは行ったり来たりを繰り返す。
エレベーターの上下移動や、忘れ物を取りに電車を往復する。
結果的には「元の位置に戻ってきた」というだけなのにフィルムを再び手にした彼女の表情は、その前よりも嬉しそうだ。