福福吉吉

死を処方する男 ジャック・ケヴォーキアンの真実の福福吉吉のレビュー・感想・評価

4.0
医師のジャック・ケヴォーキアン(アル・パチーノ)は末期症状に苦しむ患者を救うため、自殺できる装置を設置して患者自らが起動させる自殺幇助を行うようになった。彼の存在はアメリカで大きな社会問題となり、賛否が分かれていた。そして、ジャックは自らの手で患者を安楽死させて、殺人罪で逮捕される。ジャックは安楽死、尊厳死の可否を裁判で問おうとする。

ストーリーは丁寧かつ重厚に描かれており、ジャックが貫いた信念を十二分に感じることができました。

ジャック・ケヴォーキアンはあくまで自分の考えを譲らない頑固者であり、自分の考えに反する行動は味方でも許さない人物だと感じました。周辺の人々からするとかなり厄介な人物だと思いますが、そこには末期症状に苦しんだ母親の姿とそれを救いたいという思いが確固として存在しているからであって、そこが揺らぐと全てが崩れ落ちると思っていたのではないかと思いました。そうじゃなければ、アメリカ社会を敵にして戦うことは出来ない。

ジャックを演じるアル・パチーノの演技がとても良くて、実際のジャックを見たことは無いですが、本作の中でしっかりジャックが生きているように感じました。彼じゃなければジャックを演じきれなかったのではないかと思います。

尊厳死・安楽死に対してもっと議論されるべき課題であり、ジャックの行動以降、その議論が放置されていることが非常に悲しく思います。尊厳死とそれを悪用する人々をいかに乖離させるか、いかに患者本人の意思を明らかにさせるか、という問題について考えさせてくれる作品でした。

見応えのある作品でした。観て良かったと思います。

鑑賞日:2023年6月28日
鑑賞方法:U-NEXT
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