真一

イコライザーの真一のレビュー・感想・評価

イコライザー(2014年製作の映画)
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 デンゼル・ワシントンが演じる正義の殺人マシーンの「カッコ良さ」を描いた、いかにもアメリカ人受けしそうな娯楽映画。悪いロシア人を次々と血祭りに上げるデンゼルを見て「もっとやっちゃえ!」という気分に、観る人を駆り立てます。まさに排他主義のエンタメ化。移民を敵視する一部のトランプ氏支持者には「刺さる」ストーリーだと思います。

 本作品が、アメリカ大衆の反ロシア感情を見込んでつくられたのは、間違いないでしょう。公開された2014年と言えば、ロシアがウクライナのクリミア半島を併合し、欧米社会から激しい非難を浴びた年。ロシア人をめった斬りにするシーンが歓迎される土壌は、この時既に出来上がっていたのではないかと推察します。

 悪い奴らが次々と叩き斬られるアクション映画自体は決して嫌いではありません。でもその対象が特定の国の人々だったり民族だったりすると、やはり胸騒ぎがしてしまいます。レイシズムへの加担に他ならないからです。

 デンゼル・ワシントンは大好きな役者さんです。今回も、見応えのある演技を見せてくれており、面白い作品に仕上がっています。だからこそ、怖い。メジャーなエンタメ作品が放つ危険なレイシズムを、自分を含む多数の観客が無意識のうちに吸い込み、内面化していくのが怖い。

 今回の作品と真逆なのがミッション・インポッシブル5です。イーサン・ハントが最後にロシア当局と手を組むシーンに、敵対感情を乗り越えようとのメッセージを感じました。そうした観点からみても、本作品は問題ありです。演出、構成が良いだけに、なおさらそう思います。評価点は控えておきます。
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