マテ

ザ・ドア 交差する世界のマテのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ドア 交差する世界(2009年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「死と再生」「喪失の受容」。サスペンスホラー要素も含めてとても好みの作品だった。マッツは言うまでもなく至宝だし(ドイツ語も流暢で素敵)、「守護天使のパパ」に徐々に懐いてくれる娘ちゃん可愛すぎた。

前半の殺人隠蔽にハラハラさせられる。ゴミ袋に上下から詰めてみたり、白昼堂々と(近くに人がいるにもかかわらず)庭に埋めたり、携帯を探して掘り返したり。素人が人殺しなんてするもんじゃないな、と心の底から思わされた。バレる要素しか見出せないガバガバ隠蔽にヒヤヒヤしすぎて「もう、何してるの…!」と観ていられないほど心配になる。しかしなぜかバレないのだ。
なんたるご都合展開か、いや、まあ多分「生き直し」を描きたいのだろうから、それは仕方がないのかな…と思わせておいて、それこそがトリックだったとは。
失ったものは戻らない。過去なくしては生きられないが、過去だけを見ても生きられない。とても悲しいことだけれど、過去に別れを告げる機会を得られたのはせめてもの救いかと。

タイムスリップものを見るときは大抵「私が過去に戻れるとしたら、どんなふうにやり直そうかな」と考えてしまう。しかし私のいるこの世界が「5年後」とは限らない。こっちが「5年前」で、周りの誰かは成り代わっていて、いつか私が私を殺しにやって来るかもしれない。それはとても怖いから、後悔のないように生きなければという思いがじんわりと広がる余韻をもたらしてくれた。
マテ

マテ