二宮健監督のレアな初期作が、オンライン映画祭で上映されていると聞き、鑑賞。
生まれてこのかた20年。彼女が出来たことのない冴えないチェリーボーイ・大童貞太郎。学園のマドンナ・仁美に恋をした彼は、勇気を振り絞って彼女のいる演劇サークルに潜り込むが……。
後に『恋の墓』でも、童貞役を演じることになるアベラヒデノブの主演作。
学生映画の中でも、男子大学生が作りがちな生々しい下ネタのオンパレードで、いわゆる身内で盛り上がる"クソダサ学生映画"の部類ではある。
しかし、そこをそう終わらせないのが、ニノケンワールド。
撮影や役者にロケ地、小道具や衣装などにチープさは感じるものの、それを補って余りある編集と音楽のセンスが決まりまくり、とにかく、最高。
ラブストーリーにミュージカル、バイオレンスと、一つのジャンルに囚われない自由な作風が素晴らしかった。
ひたむきさが胸を打つ展開に何故か心を揺さぶられてしまったし、エヴァの完結編のようなクライマックスには涙が出てきて、感情がぐちゃぐちゃになった。
"全ては運とその時のテンションで決まる。だから、全てを肯定できる"
個人的には、他者との関係性の中でメンタルについて考えているタイミングでもあったので、この言葉に救われた部分もあった。
<<エログロおバカメーター>>
エロ ☆×3.8
グロ ☆×3.5
バカ ☆×5.0
・エロポイント
直接的な描写はないものの、下ネタは全開。「受精」を題材にした演劇に取り組む展開で、ヒロインが卵子役、その他の男子部員が精子役はマジでえげつなさ過ぎた。そのため、悪い意味でホモソーシャル的な部分が大半で、女性は嫌悪感を抱いても仕方のない作品とも……。
・グロポイント
クライマックスで、突然のバイオレンスがきて、驚く。三島由紀夫的というか、タランティーノ的というか、なんというか、いうなれば、『桐島、部活やめるってよ』に通ずるカタルシスがあった。
・おバカポイント
文句無しのおバカ映画でしたね。内容には何の関係もないけれど、純粋な好みからかBTTF風なフォントになっているタイトルロゴなど、監督の映画愛が爆発。個人的には、受精ソングを歌うぶっ飛び演劇サークルを描きつつ、その演劇のシナリオが、絶妙にクライマックスに活きてくるという無駄にレベルの高いメタ構造が激アツでした。