イチロヲ

四畳半襖の裏張り しのび肌のイチロヲのレビュー・感想・評価

5.0
性の営みが身近な存在となっている色街で生まれ育った少年(中沢洋)が、無自覚的に生きる活力を振りまいていく。大正・昭和期の性文献「高資料」を題材にしている、日活ロマンポルノ。同監督「四畳半襖の裏張り」とは無関係の独立作品。

主人公の少年は、性別に関係なく性の歓び(=活力)を与えていく、バイセクシャル的な伝道師として登場する。本能を具現化させた少年には「死」という概念すら存在しないが、本人の意志に反して買われてきた芸妓たちには「死」が付きまとっている。

ドラマの根底にあるのは、人間の「性と死」について。徹底された純和風の雰囲気作りと、「人間の日常そのものがエロスである」とする神代流哲学が、そこはかとない普遍性と官能性を伝えてくる。

シベリア出兵を見送る芹明香が「男と女はアレしかないよ、バンザーイ」と気だるく言い放つところが、屈指の名シーンとして知られている。日活ロマンポルノの本質部分が、この短い台詞に集約されていると言っても過言ではない。
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