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雪夫人絵図のtackyのレビュー・感想・評価

雪夫人絵図(1950年製作の映画)
4.5
嫌よ嫌よも好きのうち。

溝口の作品の中でも、最下層の女性では無く、元華族の奥様の話なので、評価の別れる作品であるのが残念だ。

木暮美千代が美しい。本当に雪のように白い。
旦那は愛人を家に招いたり、常に叱責したりするが、最後は無理矢理に慰められてしまう。
とても優しいが、手も握らない幼馴染の上原謙より、強引だが力強い旦那の柳永二郎に、嫌々ながらも惹かれていく女の「性」(さが)を、身体全体から滲み出している。

対局に位置する、久我美子演ずる男に対する毅然とした態度の娘が、最初、上品で美しい雪婦人に惹かれるが、最後は批判する事によって、このどうしようもない「性」を引き立てる演出が素晴らしい。

最後のホテルのワンショット、崖に向かう雪夫人、パンしてボーイを映し、元に戻して突然居なくなる。
「雨月物語」のラストの囲炉裏端のワンショット。
「西鶴一代女」の城の長廊下のワンショット。
と共に映画史に残るシーン。素晴らしい。
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