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悼む人のKUBOのレビュー・感想・評価

悼む人(2015年製作の映画)
2.0
観念の中でこねくり回して作ったような薄っぺらい「おはなし」だった。

私もニュースで痛ましい事故や事件で幼い子供が亡くなったりしたのを聞くと、思わず手を合わせたりはする。身近な人間が亡くなったりすれば、私が覚えていることでその人を胸の中でいっしょに生きていこうとは思う。だが、

親友が亡くなったのがショックで1年もふさぎ込んでた青年が、突然聖人のように、亡くなった見ず知らずの人を「悼む」ために全国を行脚するって、「あなたを忘れません」って、何なの? 彼の話すあらすじのような供養の言葉は、年忌法要の坊主のはなし程度にしか聞こえない。

だいたい、お父さんは心の病で人付き合いもできず、お母さんは末期癌で、妹は男に捨てられた上に身重で、この家には経済力はほぼゼロなのに「悼む」ために全国を行脚するお金と余裕はどこにあるの? お前が家族を支えなきゃいけないんじゃないの? 人様を「悼」んでる暇があったら、死の間際の母になぜ寄り添ってあげない。

彼が親友の死から立ち直り、余命わずかな母の命に寄り添う物語ならわかるが、なぜ中途半端に聖人然としているのか? しかも終始一貫「聖人」ならわかるが、旅の終わりには石田ゆり子抱いちゃうし。だったらただの悩める若者にしとけよ。

この石田ゆり子と井浦新の物語なんてもっとヤダ! 唾棄すべきエピソードだし。

きっと普遍的な大きなテーマを描きたかったのだろうが、作家の力量が及ばない。俳優の力量も、監督の力量も及ばなかった。だいたい、なんで堤幸彦なんだ? 全く得意分野じゃない。

映画とはそもそもフィクションなものだけど、観客の心の中では実在の人物以上にリアルな存在となるものもある。だが、残念ながら本作は、あまりに陳腐な「おはなし」でしかなかった。
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