真夜中

ナショナル・シアター・ライヴ 2015「フランケンシュタイン」の真夜中のレビュー・感想・評価

4.3
「フランケンシュタイン」と聞くとまず頭に浮かぶあの怪物のイメージ。本舞台で初めてあらすじを知ったのだが、あの怪物ではなく、それを生み出した博士の名前がフランケンシュタインなんだね。そんな浅い知識しか持ち合わせていない自分でもとても面白く観劇することができた。

天井から下がる無数の電球、列車から散る火花、まるで本当に降っているかのように錯覚してしまう雨、池にかかる橋、天井から降りてきたと思ったら床からも迫り上がってくる場面転換のセット。舞台美術が本当に豪華で斬新で飽きることがなかった。
盲目のお爺さんが住む住居のガラス窓が薄い紗のような布で表現されていて、室内での人の動きが透けて見え、かつ外で動く人の影が布にうつり、2つの空間を上手に見せていたように感じる。

ジョニー・リー・ミラーが怪物役でベネディクト・カンバーバッチが博士役を演じたものを観た。怪物が生まれる場面での、自分の四肢に力を入れ地面へ預けると身体を浮かせることができるということを本能で理解したような動きがとても生々しくて目が離せなかった。役者ってすげえんだなあ(アホの感想)。役を入れ替えたバージョンも観たくなるのめちゃくちゃよくわかる。

自分の身勝手な動機で生み出してしまったその子を生みの親である自分は心底愛せるか。子どもを産み育てる私たち人間が抱える葛藤にも似ていると思った。
憎むことが生きる意味となった怪物が博士を失い、本当のひとりきりになってしまったあとのことを考えると、とても寂しい気持ちになった。良い作品でした。
真夜中

真夜中