ペイン

ヘウォンの恋愛日記のペインのレビュー・感想・評価

ヘウォンの恋愛日記(2013年製作の映画)
4.3
ジム・ジャームッシュ同様にホン・サンスは真似しようとすると大火傷するタイプの、一見簡単そうで天性の(映画的)運動神経の持ち主。

本作は、妻子ある大学教授(西島秀俊+濱口竜介風)との道ならぬ恋を断ち切れず右往左往するヒロイン(筧美和子+中村アン風)の心模様を綴る。

ゆるんだ構図、(一見)こだわりのない風景と色彩、特徴的なズームなど、観る人によっては困惑するであろうクセすご作家ホン・サンス。実際、日本での彼の評価は(彼の私生活の騒動込みで)レビューサイトなどを見ると平均3.0前半で、中には3.0を割っているものもある。それでも一定のファンから根強い人気があり、私も彼は無視できない存在である。

とある韓国の映画評論家との対談で、ホン・サンスは「ズームをしたい気持ちがあっても、実際に撮影に入った時は使わないで、 その次に後回しにして使ったりする。(中略)考えずに思い浮かんだらその時にします。 思いついた考えを論理的に整理し、システム化することへの抵抗があります」と語っていて、もちろんアイデアを論理的に理詰めてシステム化することで大成功している作家もいるが、彼はとにかく直感的で即興的な天才と言える。

久々に観たホン・サンス劇場、またしても一服の清涼剤のような気持ち良さを味わった。
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