かの"PTA"改めポール・トーマス・アンダーソンが、"20年映画学校に通うよりも
本作から学べることの方が多い"と評し、アンダーソン自身が若き頃に本作及び本作の音声解説を繰り返し見て映画のノウハウを学んだ1作。
主演のスペンサー・トレイシーは勿論、大傑作『北国の帝王』コンビ(※リー・マーヴィン&アーネスト・ボーグナイン)等、キャスティングのあまりに渋く濃ゆ~いオッサン濃度に(良い意味で)窒息しそうになる。
ヒッチコック『めまい』や、フォード『捜索者』が映画史上の1つの到達点であることは確かながら、時を同じくして50年代後半のこの名作が、影に埋もれてしまっていたのは惜しい。
小さな町ブラックロックに隠蔽されたレイシズムと暴力。それらを炙り出し見せていく語り、演出の確かさと役者陣に至るまでパーフェクトながら、まったくもって"偉そうな名画"然とせず、あくまで(ちょっと物足りないくらいアッサリ)"B MOVIE"に徹している辺りが見事。