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肖像のleylaのレビュー・感想・評価

肖像(1948年製作の映画)
3.8
黒澤明が木下恵介監督のために脚本を書き下ろしたという、何とも贅沢なコラボ作品。爽やかで後味がいい。

妾(めかけ)である主人公のミドリとその愛人が、純真無垢で善人な画家一家とワケあって暮らすことになる。妾であることを隠しながら一家と親しくなるうちに、ミドリは自分自身に嫌気がさして後ろめたくなっていく…

『肖像』というタイトルは、ミドリが絵のモデルになることに由来する。肖像画はミドリの心を変える要因にもなり、芸術の力を感じられる。

女性の独り立ちが難しい時代に、亡き母の質素な着物を着て歩くミドリの後ろ姿が逞しく見えた。清々しい結末でした。

異様なほどのピュア感でわざとらしいなぁと思っていたのに、観ているうちに一家を好きになってしまった。これは木下恵介マジックかな。

お目当ての佐田啓二はちょっとしか出ないけど“純心”がピッタリ似合う爽やかさ。東山千栄子、桂木洋子もいい人感が滲み出る。愛人の小沢栄太郎も野良猫を拾ってきたりして憎めない。

1948年は、自由が丘駅徒歩5分で中古一軒家が格安で20万円の時代。
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