カーペットがある限り

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇のカーペットがある限りのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

「ナルコ・コリード」って勧善懲悪のマッチョでタフガイ礼賛だから、凄くわかりやすい。しかも、ギャングに憧れを持たせた破壊力もこれまで以上。歌詞も「邪魔する奴はバズーガ砲でぶっ放す!」なんて聞かされたら、簡単にギャングの味方になりそうだ。

その裏、メキシコでの現実を見ようとする「ナルコ・コリード」のファンや歌手はほとんどいない。毎日何百人という人たちが、家族ごと惨たらしく殺されている。実際、リアルを知って怖気づく歌手もいる。

あ。規模は違うけど、どこかで見た構図だ。

スタッフが力の限り夢を与えて、来場した人が思う存分夢気分になれるTDL。

手を変え品を変え、飽きが来ない、期待を裏切らない夢の国。

しかし、夢を演出するスタッフへの過酷な待遇はもはや隠す事ができない周知の事実になっている。

そりゃあ、アタシだって楽しみたいもの。その場にいたら、ミッキーやミニーと記念撮影したり、大勢の観客と一緒にテキーラ片手に「ムカつく奴は、皆殺し!」って歌いたくなるかもしれないわ。

昔から、夢やブームに乗るだけでいいのかと、疑念を持って生きてきたけど、ナルコ・コリードの裏側にはあまりにも悲惨な現実がすぐそこに横たわってる。

悲惨な現実を知りたいかどうかは、その人次第だけど、知りたい人はほとんどいないでしょうね…。

「ここで生きていくしかない」

メキシコのギャング抗争の真っ只中の街で言葉少なにこう語る警官の表情こそ、真実を知ることを選んだ人が受け止めるものだと感じたわ。