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愛獣 赤い唇のニシのレビュー・感想・評価

愛獣 赤い唇(1981年製作の映画)
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これはすごい傑作、終わってみれば血を求めた生臭さが残る。加藤彰印の、情事の代償としての受け渡し(金、シャンパン)、それを拒む者を泉じゅんは暴力で刺す。だが泉じゅんはアイスピックを放し強姦を受け入れてしまう。女は男に身を預けてこそ幸福とばかり、彼女は安定を求める。

奈美は完全に体を委ねる、ビール瓶を突きつける役目は本来女性のはずだがその役割さえ男性に奪われる。安定を得た2人であるはずがその退屈さから自殺をする。

泉じゅんは最後の抵抗でアイスピックを恋人の胸元に押し付ける。それが貫通することはない、その血を綺麗に舐めようとする。翌朝仁が恋人を殺しに来る、そのムーブは明らかに泉じゅんが男に対して完遂し得なかったアイスピックを突き刺すムーブ。その様子を泉じゅんは黙って見守る。

泉じゅんは果たしてこの映画で何をしただろう。安定を得た奈美、反発し血を求めた仁、両方死んでしまった。安定を求めるも中途半端、血を求めるも刺しきれない彼女はその中間でふらふらと歩き続け、エンドを迎える。
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