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イット・フォローズのniwajunのレビュー・感想・評価

イット・フォローズ(2014年製作の映画)
3.6
評判良かったので観てみました。ホラー映画としてはあまり怖くはありません。ティーンエイジャーに向けたお灸と愛に溢れたメッセージが込められた映画です。
また、監督はこの映画は性病のメタファーでは無いと語っています。

個人的解釈ですが、この映画が伝えたいメッセージはティーンエイジャーに対して
①死や老いへの不安や恐怖の存在
②不安や恐怖への対応策
の2点を伝えている温かい映画です。



①死や老いへの恐怖

ゆっくり一定の速度でやって来るものは「時間」のメタファーでしょう。
この映画でSEXが象徴するのは「大人」です。子供だった頃は時間の概念無くただ遊んでいました。ある日ふと死や老いへの不安を感じ始めます。主人公仲良しグループは背伸びして大人になりたい子供の象徴です。だから「それ」が見えないのです。

②不安や恐怖への対応策

これは作中に「描かれなかったもの」が逆説的な答えでないかと考察します。ずばり宗教や父母です。

このあたりどちらかと言えば古く保守的な家父長制を重んじるプロテスタント的な思想を感じます。

大きな家、庭にプール、カントリー調の壁紙や家具に、壁に飾られる家族写真…割とオールドスタイルのアメリカ家庭を描いている本作に何故十字架が出ていないのでしょうか。

監督は聖母マリアを描いた作品「ヴァージン」を作っている為、宗教的知識はしっかりある方です。ですが本作には教会も十字架も出てきません。また父や母もほぼ居ないのと同じです。冒頭、父への謝罪で始まる本作は古くからの宗教的規範が失われつつある若年層への警鐘が込められているようです。

宗教的な暗示としては色々な所に現れるXの文字(XmasのXや十字架を暗示)で、表現しているのでしょう。

父や母に相談しないのは何故か。宗教が描かれないのは何故か。「それ」への解決策は描かれなかったものの中にこそあるのではないでしょうか。


ラストシーン解釈


映画で描かれる若年層は自らの不安や恐怖を先延ばしにする為に刹那的な快楽へ逃げます。しかし、答えはそこではなく、真実の愛を誓い共に歩く相手を見つける事だと思われます。やがて来る死から逃れる事は出来ませんがそこに立ち向かう心の支えが必要なのです。

病院で主人公と仲間の情事シーン後病室に置かれている花は「水仙」。花言葉は「自己愛」です。結局、彼らの行為は相手を思いやる行為ではなかったのでしょう。

ラストシーン、手を繋ぎ、歩く2人は生涯の伴侶となり真実の愛を創り出す事が出来るのでしょうか。



ティーンの皆さん、宗教や大人は古くさいだけのものではありません。昔から大人はみんな恐怖と戦ってます。その答えが宗教だったりしました。自分でどうにもならない事にぶつかった時はお父さんやお母さんに相談してみてはどうでしょう?

また、大人たるもの悩み多きティーンに導きを与える事が出来る様になりたいものです。
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