stanleyk2001

ソ満国境 15歳の夏のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

ソ満国境 15歳の夏(2015年製作の映画)
3.7
「ソ満国境 15歳の夏」2015

文部科学省選定。学校で授業内に見るような教育映画の様に説明がしっかりしている。その分、映画として荒々しさとかドラマチックさにかける印象を受ける人もいる様だけど。

21世紀の中学生が67年前の出来事と地続きの実感を持つための「中国に招待されて映像作品を撮る旅」という枠組みは必要だったのだと思う。

この映画の良い所は「日本の大人が子供を犠牲にした」事実を二つ描いた事だ。

一つはソ連の侵攻が近づいている国境に中学生120人を揺動作戦として(本人たちには知らせず)派遣して関東軍は最後の輸送船で大陸から日本へ脱出した事。

二つ目は東日本大震災で放射能汚染事故を起こし子供達に故郷を捨てさせた事。

そもそも福島第一原発は冷却を容易にする為海抜30mの大地を20m掘り下げて建設された。貞観地震の津波が10mを超えていただろうという研究データを無視して。だから地面を掘り下げなかった福島第二原発は津波の被害を受けなかった。なのに安倍晋三は重大事故など起こり得ないと勝ち誇っていた。

福島第一原発事故は人災なのだ。

この国はいつも国民を見捨てる。今の新型コロナへの対応も同じ。検査を抑制してついには検査無しの「みなし陽性」「自宅療養」という医療崩壊を起こして厚生労働省は平然としている。

国に見捨てられた67年前の中学生120人は故郷を目指す。ソ連軍の機銃掃射、砲撃を受けついにソ連の捕虜になり引率の教師も連れ去られ収容所に入れられる。ある日収容所から解放され(中学生は労働力にならないから)「どこにでも行け」と放り出される。負傷者も出て食料も尽きて中国農民に土下座して涙して助けをこう。

反発する農民を抑えて中学生たちを受け入れた王村長のおかげで彼等はしばしの休息を得る。

「なぜ敵国人である僕たちを助けてくれたのですか?」その問いに王村長は「倒れて涙を流している者がいれば手を差し伸べるのが人間だ。この村は昔洪水に見舞われていた。洪水のなかから赤子の泣き声が聞こえ当時の村人はその赤子を助けた。それが後の清国初代皇帝ヌルハチだ。泣いている子供を助けたことから新しい歴史が生まれた。私と君達の出会いでどんな歴史が生まれるか楽しみにしている」

山崎豊子の「大地の子」を思い出した。「日本鬼子(リーベンクイズ)」「東洋鬼(トンヤングイ)」と呼ばれた日本人孤児を育ててくれた中国人養父母の深い愛情。同胞の仇と殺されても文句は言えなかったのに。

映画は現代の中学生の物語が67年前の悲劇と繋がって終わる。新しい歴史への希望を込めて。

ウクライナにプーチンが命じたロシア軍が侵攻をした今こそ見る価値がある。傀儡国家満州国を作った大日本帝国はロシアの立場だ。70年前に終わったはずの帝国主義戦争が再び起きるとは。
stanleyk2001

stanleyk2001