日常生活の中に、少しずつ戦争の足音が聞こえてくる。
最初は淡々と始まり少しつまらないかと思ったが、絵の精緻さに魅せられた。
昔の結婚て、よく、顔も知らない会った事もない人とというのを聞くが、主人公のすずもまさにその通りに結婚していく。
不思議だが、妙にサラリとしっくりした光景を見た気がした。
すずがはるこを亡くしてしまった時の表現が好き。爆発で何が起きたか分からない感じを真っ黒な背景と簡単な線の絵で表現しているのが喪失感をより感じた。
爆発の為、すずも右手を失くす。絵を描く事が好きなすずにはあまりに過酷。
あんなにもほのぼのとして、明るいすずが、目がだんだんと死んでいく様を描いているのは、すごいなぁと感心。
基本的には物静かで、少し鈍臭いすず。しかし、時折見せる感情の爆発が観ていて胸に迫るものがあった。また、それをのんがよく表現していた。
全体を通して、いわゆる戦争の興奮や狂気めいた様が少なめなのだが、とても月並みだが、戦争は本当に良くない、というのが伝わってきた。それは、日常生活を描いているから、より戦争の怖さを身近に感じることができたのかもしれない。
観るまではトレーラーだけの情報で、戦争のなかでも、単純に、負けずに明るく生きる、というイメージしかなかった。しかしそんなことなかった。
'生きる'ということが本当に強く意識する時代なんだなと。うまく言えないけど、戦争があってもなくても、'生きる'を生々しく感じる時代じゃないかと。これは現代人の私が見てそう思うだけで、当時の人たちからしたら、そんなこと当たり前だろう。
時折挿入されるすずの心象風景のようなシーンが好きです。ジブリの思ひでぽろぽろのような。
この時期になると見返したくなる作品となりました。