カタパルトスープレックス

なんて素敵な日のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

なんて素敵な日(2012年製作の映画)
4.3
アニメーションの鬼才ドン・ハーツフェルトの「ビルの物語」三部作の完結編です。DVD『メランコリックな宇宙/ドン・ハーツフェルト作品集』に収録されています。自らが描いたWebコミック"Temporary Anesthetics"が原作のアニメーションです。

少しづつ記憶を失っていくビル。そして、医師から余命はもう短いと告げられます。人間の経験、記憶。人が死ねば、その人の経験と記憶は失われます。でも、人が死なずに永遠にそれらが蓄積されていったら?

ドン・ハーツフェルトはシナリオをあらかじめ用意せずに、即興的にこの三部作を作ったそうです。そして、1作品がそれぞれ独立して鑑賞できることを心がけたそうです。ビル自体が狂って、記憶も失われてしまうので、物語の連続性はあまりありません。しかし、物語として一貫して成立しているのも不思議な感覚です。ドン・ハーツフェルトは上映ツアーがはじまるまで、三部作を通しで観たことがなかったそうです(笑)

本作にはちゃんとオチも用意されています。おそらく最初から意図したわけではなかったのでしょうが、「生と記憶」がテーマとして最後に提示された形になっています。