小原ブラス

バービーの小原ブラスのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
2.2
バービー人形そのもの、キレイゴト映画。

フェミニズムを語るにはあまりに視野と設定が簡略化しすぎて「そんな訳ない」の一言に尽きる。

女社会であるバービーの世界から、男社会の現実世界にやってきて、そこでぶつかる違和感でフェミニズムを語ろうとする発想はよくある男女逆転もので嫌いじゃないのだけど、そもそもバービーの世界は女社会ではなくない?という矛盾が全てを台無しにしている。

バービーの世界で評価され憧れられるバービー像というのは「男にモテる女」だ。男にモテる女こそ女が憧れるカッコいい女!車椅子に乗ってるバービーだろうが、ふくよかなバービーだろうが、ダウン症のバービーだろうが、所詮はそのタイプの女性の中で「1番男にモテる女」がバービーなのだ。だから無条件に追いかけ回してくれるケンが居ることがステータス。女は誰もがピンクが大好きだし...それのどこが女社会?バービーなんて男社会で1番評価されるタイプじゃん。

また、女性にだって性欲があるんだって視点も抜けている。男社会に憧れてバービーの世界にその概念を吹き込んだケン。男たちで結託して男社会憲法を樹立しようとするが、バービーたちが男を誘惑した結果、男は男同士で戦い合って女が政権を取り戻すというくだり...

女は性欲が皆無で男だけに性欲があるのなら、その設定もありえるだろう。でも実際はバービーにだって性欲があるはずだ。毎日女子だけでパジャマパーティーなんて絶対嫌なはず。他の女よりもいい男にモテたいし、セッ⚪︎スもしたいだろうし、少しでも自分の方がステータスが上でありたい気持ちもある。自分よりもルックスの弱い人へのマウントや牽制をすることもあるだろう。男だけが競い合って戦う、女は競い合わないで結託できるという設定を見てると、この映画こそ女性から人間的な尊厳と自由を奪っているようにしか思えない。

バービー人形の矛盾をキレイゴトで言い訳しようとして、底の浅さで女性の幅をますます狭めている。バービー人形でフェミニズムを語ること自体が無理だったんだ。ただのオモチャにここまで意味を持たせてほじくり回すのって、子供の精神衛生上、本当にいいことなのか疑問。
小原ブラス

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