ベタレイヤーテール

バービーのベタレイヤーテールのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.9
マテル社よく許諾したな。それくらい「バービー人形」を自らコケ落としている映画に思えるけど、違うそうじゃない、バービーで遊ぶ経験を通して本当の現実社会を女児たちが認識できるきっかけになっている、と主張しているようにも取れる…多分。
女子は幼少の頃からどんな家庭でもジェンダーステレオタイプ(女の子は可愛く控えめに、ピンクが好きで、etc..)を強要されるように育てられるか、家庭ではそれほどでもなくても幼稚園や社会から結局はそれをがんじがらめに押し付けられて育つことになり、その結果大きくなる頃にはジェンダーを批判的に意識する子が多くなるし、極め付けはステレオタイプすぎるバービーを大嫌いになるという。物語はバービーランドの中でも特に「定番の」バービーが主人公で、人間社会を訪れた時に信じていた自分は過ごしやすかったステレオタイプは通用しないと思い知らされ、馴染みのない「多様性」という幅広いイデアルに振り回され、結果自分のアイデンティティを失う(そして取り戻す)、という展開。女性の、だけでなく男性社会のほうも顕著にマッチョに表現されるのも痛快。映画評としては、ともかくその各シーンがいちいち皮肉っぽく面白く凝っていてよくできている。
本作は、単に面白いだけでなくアイロニーに満ちていて興味深い以上に、勉強になる。傑作でしょう!