Chico

凱里ブルースのChicoのレビュー・感想・評価

凱里ブルース(2015年製作の映画)
4.0
刑期を終え、凱里市(中国の県級市)の診療所で老齢の女医と働くチェン。
甥っ子を連れ戻すために、また女医の昔の恋人に思い出の品を届けるために一人旅に出る。

好きな映画は始まって数秒、数十秒でわかる。この映画もそうだった。時間の流れ方が自分にぴったりきた。
飲んだくれた犬がやってきた夕刻。虫の音が耳に残る。
哀愁漂うロードムービー、ポエティックな世界感に惹きつけられ、マジックリアリズム的描写に不思議な感覚が呼び起こされる。度々ニュースになる謎の野人然り。
彷徨う魂の過去・現在・未来が、すれ違う列車、田舎道を走る車やバイクと並走するように流れていく。40分もの滑らかな長回しがまた素晴らしく、心地よいリズムを作り出す。
終盤、行きついた川を船で渡るところで映画冒頭の「金剛般若経」の一節が頭をよぎった。
…過去の心は捉えようがなく、未来の心は捉えようがなく、現在の心は捉えようがないからだ。

タルコフスキーの「ストーカー」に深く影響を受けたという初長編作。これがデビュー作かすごいなあ。
Chico

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