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ゼロの焦点のamuのネタバレレビュー・内容・結末

ゼロの焦点(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

新しい年になって、もう5日(嘘じゃん!)。本年もマイペースに映画を観、包み隠さぬ感想にてぶちかましていきたいと思います、よろしくお願いいたします~


昨年の新年一発目に観たものは何だったか調べたところ、「嫌われ松子の一生」だったことが判明。中谷美紀に縁があるのか、(完全にたまたまなんですけど)、今作の主演はジャケのセンターにいる広末涼子では無く実質、圧倒的・中谷美紀の作品といっても過言では無い。顔がとにかく怖い、美人ってだけでなんか怖いよ!っていう顔面力を見せつけられる一本。(北川景子はこの中谷美紀を見て勉強した方がいい。)

松本清張マニアのみうらじゅん氏が、数多の作品の中でこの「ゼロの焦点」を好きな作品の第一位に挙げており、マニアに向けた松本清張エッセイにもこの作品の影響で「断崖マニア」になり、自身を別名「みうら断崖」と名乗るほどにこの「ゼロの焦点」に登場する断崖は本当に見事で、サスペンスドラマのクライマックスシーンが断崖で自白するなど後世に多大な影響を与えているのも見所。

みうらじゅんさんの足元にも及ばないけれど、かくいう私も松本清張先生のファンで、松本清張記念館目当てで北九州・小倉にまで行ってきたことがあるくらいには好きである。

清張先生を好きな理由はその光景が目に浮かぶほどの巧みな文章と表現力に他ならないが、何よりも凄まじいなと思うのはやはり作品の根底にあるテーマにある。

すべての作品に共通している根底テーマは、人間の欲にある。その欲というのは、強欲というわけではなく、むしろその逆で、辛い思いをしてきたり、苦悩したり、必死に頑張ってきた人こそが持ったほんの些細な「こんなに辛い思いをしてきたのだからこの位、思ってもいいよね、?」という希望のような欲だからこそ怖い。

また別作品においては、その些細な欲が大きくなり強欲になったりするパターンもあるけれど、取っ掛りは些細なものだった。そのあたりが誰しもちょっと持ってしまう気持ちにも思え、余計に怖いわけです。

今作のテーマは戦争に負けた日本が受けたその後の葛藤だったりするけど、根底にあるものは先述の通りで、一人の人間の欲にある。


で、映像化された今作についてさらに言及すると、、

とりあえず犬童一心監督。
死のシーン怖すぎですよ、、
急にエグいよ、、(褒めてます。)

大筋としては、相手のことをよく知らないままお見合いで結婚をして一週間後、仕事で出張に行った夫(西島秀俊)が帰ると言った日に帰ってこない。めっちゃすき焼きとか用意して待っていたのに何の連絡も無いまま数日が過ぎる。え、どゆこと、何かあったなら連絡くらいしてくれよと、主人公(広末涼子)は居てもたってもいられず出張先の金沢に早々に出向き、とにかく生きてるのか死んでるのか、まさか女なのかを警察や夫の職場の人、後から駆けつけた夫の兄と捜索を始めるわけですが、次々に届く情報に終始驚愕し続ける話です。(?)

松本清張ビギナーの方は、「え、そんな理由で殺す?」「別にゆすられたり脅されたりもしてないのに。」と思うと思います。松本清張作品における殺人の理由はすべて読み手にとっては「そんな理由」なのがポイント。つまり、読み手(他人)からしたらそんなこと気にしなくて大丈夫だよ~、ということも、当の本人にとっては絶対に知られたくないことで、その秘密を死守するために文字通り殺すのです。今作においてはその時代背景もあって、知られたらまずいのかもしれないけれど、疑心暗鬼というか、誰も何も言っていないのに本人がバレてしまうことの恐れから保身のために殺ってしまう。辛い思いをして生きてきて手に入れた今の立場を守りたいという欲。

誰しも大なり小なり「知られたくないこと」みたいのってあって、知られたところで大したことでは無いけれども出来たら知られないでいたい、過去は死んだ、今の俺を見てくれ!みたいなものってあるのでは無いでしょうか。免許証の写真見られたくないとか、そんなしょうもなさげなことも本人にとっては重大だったりするので、いたずらに人のことを探らない方がいいよね、って話。(??)

最後にひとつ。
木村多江さんを初めて可愛らしいなと思った。
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