退廃美に溢れた戦後ドイツ、ゴミ溜めのような人と街
猫を抱き、うずくまるイングリット・カーフェンが最高に美しい。
戦後ドイツのトラウマがこれでもかというほど痛々しく描かれており、"敗戦国"日本のそれとどこか似ている。
"底辺の人々"の描写
リリーの父親のグロテスクな女装や、醜悪という意味で"小人"と呼ばれる手下は、ユダヤ人富豪の露悪さを強調している。
美しく、繊細で、今にも折れてしまいそうな娼婦リリーの腕
ミュールから見える骨張った足は不安定で、まっすぐ立って(自立して)いられない
彼女が魅せる破滅衝動は、目を背けたくなるほど痛々しいのに共感してしまう。
"嘘でも良いから言って、真実は痛いわ。"
キリスト教圏の話なのに、なぜか東洋世界における業のようなものを感じた。
この輪廻から抜け出すには、死、それだけ。
ファスビンダーもダニエル・シュミットも初見だったので、他の作品を見て、研究してからもう一度見てみたい。
〜衣装語り〜
・リリー
①白いリネンのシャツワンピにゴールドのミュールとルーフピアス、真っ赤なリップとネイル
②ゴールドフチのボタンがついた黒いポートネックワンピ(鎖骨のラインの見せ方が美しい)
③レースの花冠、ウエディングドレスのようなハイネックの層レースドレス(プリンセススリーブ、スクエア型のつけ襟で、田舎風)
④スクエアネックの白いコットンランジェリー
・娼婦仲間たち
①大ぶりの黒ボタン、黒襟の白いスーツに、黒い花のブローチ
②Vネックの黒いカットソー、太いコルセットベルト、デニムのパンツ、タイトなラウンドネックレス、ポニーテール