華麗なる加齢臭

鬼はさまようの華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

鬼はさまよう(2015年製作の映画)
4.6
【韓国俳優の役作り】
死刑制度の在り方を根底に据えた、サスペンス・エンタメ。
wikiによれば、韓国では死刑判決は下されるものの、1997年以降執行は行われておらず、現在も60名弱の死刑囚が獄中生活を送っている。

実際に起きたソウル20連続殺人事件の犯人、ユ・ヨンチョルもその一人であり、彼はレインコートキラーを呼ばれていることからも、この映画のモチーフとなったことが想像出来る。それら被害者の心情を考えた時、刑が執行されない死刑囚の存在は、あまりにも残酷だ。
悲しみ、憎しみを乗り越え新たな一歩を踏み出そうにも、犯人が生きているという悔しさから、心の整理が出来るものではないだろう。

さて、この作品で再認識したのは、韓国俳優の役作りの上手さだ。
犯人を追うテス刑事役のキムサンギュン、そして被害者の夫スンヒョンを演じたキム・ソンギュンは、3年前と3年後では全くの別人である。(キムサンギュンは僅か10日間で体重を10kg程落したとのこと)

また犯人役を演じたパク・ソンウンも、冷血なサイコキラーを最後の表情に象徴される様に、見事に演じ切っている。暴力性と冷淡さ、そしてふてぶてしさが粒子となって画面から飛んできそうだ。