カネコ

エル ELLEのカネコのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
3.8
ELLE=フランス語で“彼女”の物語。
本作の“彼女”とはミシェルの事。
ミシェルは複雑な女性だと思う。ゲーム制作会社の社長で成功し自立した女性だけど10歳の時父親が大量殺人事件を起こしてその娘として注目を浴び、今でも彼女を嫌悪している人が少なからずいる。

今作はミシェルが何者かにレイプされる所から始まる。事が終わって犯人が逃げた後ミシェルは泣きもせず警察にも連絡せずに静かに部屋を片付けて寿司を注文する。
ミシェルの行動に始めは面食らうけど、子供の頃に守ってくれなかった警察に連絡する気にはならないだろうし、事件が世間に知れたらセカンドレイプの心配もあるから親しい友人にしか言わないのはまあそうなるかも。

ミシェルの性格は女性より男性に近いんじゃないかな。
なんと言うか自分の気持ちに正直な人。
女性も自分の気持ちや欲望に正直になりたいけど男性より力では劣るし社会的地位も女性はまだまだ男性に及ばない。
ミシェルのように社会的に成功して経済的にも自立していたらこういうある意味男性的な対応する人は多くなる気がする。
男性の性的暴行事件はなかなか表面化しないし。
ミシェルのように社会的に成功している男性で色々な人と関係を持っている人は多い。
こういう自分に正直な女性のキャラは個人的にけっこう好き。
邦画で言うと人のセックスを笑うなのユリとか。

ただミシェルの生い立ち含めて普通の感覚とはかけ離れていてこの作品は観た人に共感させる事を敢えて避けているようにも感じた。

レイプ犯を自分で探しながらミシェルの男性関係が明らかになって来る。
ミシェルの男性関係は複雑に見えるけど意外とあっちもこっちもじゃなくて隣人のパトリックに惹かれたらロベルトとの関係は辞めようとしてる。ロベルトはちょっとしつこい笑
犯人は隣人のパトリック。彼はレイプや暴力でしか興奮できない性癖だった。パトリックとミシェルはSMのような関係に。
ミシェルが車で事故った時にアンナも元夫リシャールにも連絡がつかなくてパトリックに助けを求めるのはなんか分かる気がした。これからどう転ぶか分からない一線越えた関係の相手ってこういう時来てくれるよね。

パトリックや殺人犯の父親含め登場する男性にロクな奴がいない。
その中でも一番ヤバいのはミシェルの息子ヴァンサン。
定職に就かず働いてもすぐ辞めてしまう。
恋人ジョジーとの間に子供が産まれるが白人同士なのに子供は黒人。
短気で短絡的な性格。子供の事をミシェルに突っ込まれた時は激昂したのに困った時にはミシェルには甘えている。良い歳して母親にスーパーでお菓子買ってもらったり、タダ酒は泥酔するまで呑んだりとりあえずクズ。最後はミシェルがパトリックとの関係を切る為に良いように使われてしまった。
ミシェルは息子の家の頭金出してあげたり世話焼いてる割に都合良く息子利用してるのが強い。

今作では男性のクズっぷりに対して女性の強かさが対照的。
ミシェルは言わずもがなレベッカも強い信仰心でパトリックの性的嗜好は受け入れずミシェルとの関係も黙認していた。どこかでパトリックがこういう結末になるのを望んでいたのかも知れない。
アンナもロベルトがミシェルと不倫していたのを知りロベルトとの関係を絶ってミシェルと暮らす事に。
もうミシェルがいれば男要らないのかも。


それにしてもイザベルユペールが美しい。当時64歳とは。めちゃくちゃ憧れる。
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