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あの手この手のろのレビュー・感想・評価

あの手この手(1952年製作の映画)
4.0
「アコのアの字はどんな字書くんですか?」
「アホのアの字。アハハハッ!」

偶然TSUTAYAで見つけた今作。
「淑女は何を忘れたか」にソックリでびっくりしました。
小津さんの「淑女は何を忘れたか」が静のクスクス笑いだとすれば、今作は動のゲラゲラ笑い。
「黒い十人の女」と同じ脚本家なので、とにかく女性が魅力的!久我美子演じるアコちゃんのお転婆でウソつきで、でも憎めない可愛さが溢れていますよ。

〈あらすじ〉
大学教授の鳥羽さんは小説家志望。大学を辞めようか迷っている。しかし活動的な奥さんにはなかなか切り出せない。
そんなある日、奥さんの姪っ子 アコちゃんが転がり込んでくる。彼女は家出をしたという。夫妻はアコちゃんを家に帰そうとするが...。

私と同い年のアコちゃんはやりたい放題。
ずる賢いアコちゃんに鳥羽さんはやられっ放し。
しかし、自由奔放なアコちゃんに振り回されるのは鳥羽さんだけではありません。

ずっと家にいて退屈なアコちゃん。
そこへ鳥羽さんの教え子 秋山さんがやってくる。
すかさずアコちゃんが言うんです。
「おじ様、秋山さんがアコが退屈してるからって、大阪見物へ連れて行って下さるんですって。でもアコ、おば様に外へ出るなと言われてるからお断りしたんですけどね。どうしてもっておっしゃるから行ってくるわ!」
身に覚えのない話に目を丸くする秋山さん(笑)

やっと外に出れてアコちゃん大喜び!と思いきや、カフェに行くと秋山さんの自慢話を聞かされる(笑)呆れたアコちゃんはカメラマンの天平君に電話を掛け、彼の元に行っちゃうんです。秋山さんは置いてけぼりで(笑)

天平君との会話。
「大阪って広いわね~!」
「そうだね。いろんなやつが住んでいるからね。威張ってるやつ、弱いやつ、待ちぼうけ食ってるやつ...」
ここで画面が切り替わって、待ちぼうけを食らってタバコをふかす秋山さんが映る(笑)憎いですよ、この演出(笑)


「おば様、あんなに威張って癪ね。アコはおじ様の味方よ」
奥さんの方が力があって、いつも彼女の顔色を窺う旦那の鳥羽さん。
そんな彼をアコちゃんは情けないな~と思いながら見ている。
この状況をなんとかしたいと、アコちゃんはある作戦を思いつきます。そして実行するのですが、奥さんにバレちゃう。
都合が悪くなったアコちゃんは40度の高熱を出すのですが...。

話はでっち上げるし、何かと問題児なアコちゃんだけど、彼女のおかげで鳥羽夫妻はじっくり話し合うことが出来るんですよね。アコちゃん、ナイス!


ここまで存在感のあるキャラクターは久しぶりに見たような気がします。
小津さんのコメディも上品で大好きだけど、市川監督のコメディは色っぽさもあって華やかでいいなぁ。


「アコちゃんてねぇ。あの手のア、この手のコかい?あの手この手か。なんかそんな映画あったような気がするねぇ」
ろ