キネマクロラ

ワンダー 君は太陽のキネマクロラのネタバレレビュー・内容・結末

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「誰だって一生に一度は称賛されるべきだ」

ということで、僕はオギーの姉ヴィアの親友ミランダを称賛します。彼女のエピソードは切ない。痛いほど切ない。
彼女の場合、オギーとは逆にその美貌が偏見を生んでいるように思える。

初登場するシーンで「アタシさぁ~、高校デビューしたから~、もう地味子ちゃんとはツルんでらんないの~」とピンク髪でのたまうので、あまりいい感情は持てないのだけれど、話が進むと、こんないい子はいないよ~ってなる。

オギーをわが弟のように可愛がっているところからも根がいい子なのは間違いない。ただサマーキャンプで流行っていた他人ごっこでヴィアのフリをしたことで、彼女の人気の秘密に気づいてしまい、自分との差を感じてしまう。今まで、お互い家族のことで苦労するよね、って同じだと思ってた親友が、自分よりも圧倒的に上だったと分かった時の衝撃。劣等感と焦燥感。自分だって自分だけの何かで注目されたい。

思わず逃げ出したくなる家。忘れてしまいたい自分の境遇。他人ごっこでヴィアを選んだのも偶然じゃない。なぜならプルマン家はあこがれの家だから。障害があっても家族皆で支え合って生きていける暖かい家だから。ヴィアと距離を置いたのはその光が眩しすぎたから。
そんな自分を変えたくて、無理して似合わない仮面をかぶってみたけれど、やっぱり自分以外の何物にもなれない。逆にヴィアは自分がいなくても一人でどんどん人生を切り開いていける強さがある。改めて突きつけられる彼女との差。他人越しにしか伝えられない敗北宣言。自分の弱さ。

その切なさが最高潮に達するのは演劇の初日。客席にいるヴィアの家族を目にした瞬間、ミランダは主役をゆずることを決意する。半分はヴィアのため。きっともう半分は自分のため。プルマン一家は幸せでなければならない。だってそこには自分が求めて止まない理想の家庭があるのだから。

うぉ~~~、これは切ない!涙出る!窓越しにプルマン家を見るカットなんてマッチ売りの少女並みに切ない。
彼女にはヘルメットをとってくれるパパもいないから、自分で脱がなきゃいけない。「私だけはあなたの味方」というおばあちゃんの言葉をミランダにもあげたい。

月は自ら光ることはできない。
それゆえに満ちたり欠けたりする。
そこが美しいとも思うのだ。

「あれ、見て」
「どれ?何を見てる?」
木々の隙間から見上げた空には半分欠けた月が優しく浮かんでいる。