こんなに孤独や虚無感に向き合わされる映画は久しぶりで、実話なだけに「まさかこんな人生があるなんて」という波がエンドロールで寄せてくる感覚だった。
大海原に一人。陸に置いてきた生活と家族。責任に縛られて犯した小さな罪が、取り返しのつかないことになっていく。ドナルドの運命は果たしてどうなるのか―。
個人的には、前提としてこんな綱渡りをできるドナルドのような人の気持ちが分からないし、途方もなく航海する時の精神状態というのを「知らない」ために、極限に立った時の人間の心理というものを想像しながらシーンを追っていく新鮮さがあった。
この心細さはなかなか無い。
ドナルド・クラウハーストのWikipediaも興味深かった。1970年以降、彼の人生は幾度もドラマになり映画になった。
彼は他の船乗りと同じレースのスタートを切ってはいたが、実はまったく違う世界で航海を続けていた。その精神世界に魅せられた人間が過去何人もいたということだ。