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僕のワンダフル・ライフのLCのレビュー・感想・評価

僕のワンダフル・ライフ(2017年製作の映画)
4.2
面白かった。

原題の「A dog’s purpose (ある犬の目的)」を、犬さんの目線を通しながら人としての目的にも思いを馳せられる。生きる意味について。

あくまで人の言葉で犬さんの感じたこと、考えたことを説明してくれているので、「実際はどうなんやろ」と思う部分もあるかもしれないけれども、説得力のある部分もちゃんとある。
例えば、嬉しい時に尻尾を振ることはとても有名だけれど、「尻尾を振ったら嬉しいらしい」と学習して、喜ばせる為に振ってみせたりすることもあるらしい。
また、人を瓦礫の下から見つけるお仕事をしている犬さんは、生きている元気な人が隠れてその人を見つける訓練をするのだけれど、理由のひとつとして「仕事で死んでしまった人を見つけ続けると元気がなくなるから」というのもあるらしい。
結構犬って、人のことを高解像度で見てたり、もっともっと単純に、人のことが好きだったりするようだ。飼い主の感情を敏感に察知したり、飼い主が喜んでいると自分も嬉しいといった性質を持っていたりするらしい。
本作でも、犬さんがその命をまっとうする中で交流する様々な人を「寂しそう」と見抜いたり、「今ぼく良い仕事したみたい」と理解したりしている。
知る程に、犬族の持つ人族への愛の深さに驚く。可愛く賢いだけでなく、想像を凌ぐような深い愛を持っている不思議な生き物だ。

犬さんのこと以外にも上手に描くなあと思うのは、時代の移り変わりをちょっとしたところで表すところ。
その犬さんが、その命でどのくらい長く存在したのか、車のデザインや人々のファッションで直感的に知ることができる。最初の命から、随分長い時間が経った。それはそのまま、最初に出会った「絶対離れないぞ」と思える彼が過ごした時間の長さをも物語る。
そして、時間が経っても変わらない景色が広がる。

犬さんと過ごす様々な人も、それぞれに個性がある。
孤独の中苦しんでいて、いつも難しい顔をしていて、銃を持つ手が震えるけれど、深い愛情をきちんと持っていた人。
上手く人の輪の中で馴染めずに寂しいけれど、犬さんのことはきちんと可愛がっていて、だけれどその健康には良くないことをしてしまう人。油分を与え過ぎるのは、犬さんの体にとっても健康リスクが高いようだ。
そして、可愛さに引っ張られて購入したものの、世話もろくにできず、雪の降る日も狭い庭に鎖で繋ぎっぱなしで、更には最後まで責任を持って飼い続けることのできなかった人。
人の都合で、簡単に命を縮めたり、苦痛から逃げることもできなかったりするが、助けを求める言葉を持たない存在。

本作では、犬さんの表情も印象的に映し出されている。
きちんと犬さんと向き合って過ごした人は、彼らの表情はもちろん、顔の見えない状態で鳴き声を聞いただけでも、どんな状況でどんな気持ちなのかわかるようになるという。
私にはそのような経験はないのだけれど、そんな私でも「楽しそう」とか「老いて疲れてそう」とかってわかりやすく描かれている。
きっと、犬さんと真剣に向き合って、愛情を持って過ごした日々を持つ人たちには、本作を見ていて読み取れることがもっとたくさんあるのだろうと感じる。

作中「何を考えているの?」と人側が問う場面がある。
本来、犬さんとは会話ができない。きっと、多くの人が同じように問いかけたことがあるんだろう。
楽しかった?幸せだった?犬さんに愛情を注ぐ程に、「幸せだったよ」と言葉で聞くことのできない苦しみは大きくなるのだろう。私は良い飼い主だった?私との暮らし、好きだった?
そして、「きっと、幸せな気持ちでいてくれた」と、残された人側は何とか納得して生きていく。それもひとつの「 Be here now 」だ。
そんな経験のある人は、本作で涙を流さずにはいられないかもしれない。そんな人たちの為の作品でもあるんだろう。
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