先生

荒野にての先生のネタバレレビュー・内容・結末

荒野にて(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

評価が良いので気になっていたら、もうすぐ配信終了なので見た。良かった。心が揺さぶられる。

だれずに適度に緊張感があり、示唆に富んでいて面白かった。

チャーリーが走るシーンが印象的。
朝起きた時、父親と女性の会話に居場所が無いように感じてランニングに出かける。
父親が刺された時、警官に質問責めにされて、逃げ出す。
父親が死んだ時も逃げ出す。
ピートが処分されそうになった時も逃げ出す。
親切にしてくれた家も挨拶無しでそっと逃げ出す。
ピートが死んだ時も走って逃げ出す。
トレーラーでお金を奪われた時、武器を見つけて立ち向かうがやっぱり逃げ出す。
そしてその先でやっと叔母に出会う。

逃げて逃げて、逃げ続ける。
ラスト、新生活でこざっぱりとしたチャーリーの走る背中。最後に振り返る。
なにかを探すような。なにかを思い返すような。そんな仕草に感じた。

孤独とはなにか。観客はチャーリーの孤独を理解出来るけど、出てくるキャラみんなチャーリーの孤独がわからない。叔母さんだけは全てを察してチャーリーを受け入れる。それでも、チャーリーが悪夢を見ると打ち明けられるまでその深さはわかっていなかったかもしれない。

「チャーリーはピートのような家畜だ」と評する人がいてなるほどなと思った。父親の事情に振り回され、学校にも通わせてもらえない。夏休みだったかもしれないし、引っ越したばかりだからかもしれないが。あまり細かく面倒を見るという様子も無い。愛玩動物のような扱い。
ピートを連れて逃げた先の家で、みんなに野次られて蔑ろにされている女性が出てくるが、これもまたチャーリーみたいなものなんだろう。学歴を与えられず家からも出されず飼い殺しにされている彼女。チャーリーもそうだったという対比。

そして、よりどころのピートを失い、それでも叔母のところへ行こうと金を稼ぐがそれも奪われる。奪われて人をおそらく初めて殴った時、チャーリーが鏡の自分を見つめる。父親を刺した男のように暴力をふるってしまった自分の変化をまじまじと見つめる。
このシーン良かったな。結局手を洗ってないということは罪悪感を流せてないという風にもとれる。マクベス効果みたいな。

キャラの仕草やセリフ回しが丁寧で見ていて気持ち良かった。良い映画。しんどくなるけど。
先生

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