やわらか

否定と肯定のやわらかのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.9
映画自体としてはとても面白かった。デリケートな話ではあるけれど、映画における主人公サイド(ホロコースト肯定側)の問題点にも一定の強度で言及されているし、学問と法律(米 and 英)、さらに人間的側面における判断の違いが上手く描かれてる。
 
とはいえ、この件に関して裁判が比較的スムーズに進み、コンセンサスの得られる結果に結び付いたのは、映画に登場する各国(米国、イギリス、ドイツ、ポーランド)において、少なくとも政府の公的な立場と判決が一致していたからだと思う。例えば、同じように論争となっている歴史的問題について同じアプローチを取ったらどうなるか?っていうのは、映画観ながら頭にあった。
 
作品中、アウシュビッツで行われた現地調査で否定論者の故意のねつ造に関わる重大な事実が判明する。でも、問題が発生した場所で公平な調査が行うことが困難であったり、もっと言えば跡形もなく消されていたりしたらどうなるのか、ということはとても気になったな。
 
これは、ある問題に対して自分の主張が肯定であれ否定であれ、客観的な判断の材料が得られるかどうかは最終的には限界がある、ということだろう。個人的には、自分が絶対的に正しいと思う時にこそ、その判断の根拠となっているのがどこかを意識しないとヤバいなとは思った。意識して答えの出ることではないかもしれないけれど。
 
映画の内容とは直接関係ない話だけど、TOHOはいい加減マイナー寄りの洋画買い付けて、ろくな宣伝もせずに上映館絞ってひっそり上映して、知らん間にフェイドアウトさせるの止めて欲しい。この作品、評価高いのに東京でシャンテだけ。『女神の見えざる手』とかもそう。
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