やわらか

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のやわらかのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

某多国籍食品企業を告発した実在のパキスタン人をモデルにしたお話。

この企業は日本ではインスタント珈琲で有名ですが、ここでは特に発展途上国における粉ミルクの販売に際し、違法な行為や倫理に欠ける姿勢が批判されてます。

この映画で告発されている不正は1つではなく、

①途上国の汚染された水で粉ミルクを薄めると健康被害が出る事実を知りながら、適切な注意喚起を行わなかった

②医療機関の関係者にリベートを贈り市場を独占した

という2つの問題が同時に扱われます。
そのことで対応がより難しくなっているように感じられます。

また、告発する側の主人公や彼をサポートするNPO、それに告発に関わるジャーナリストの側にも、違法な行為や中立性の欠如があることも映画の中に描かれます。

たくさんの課題を提示し、一度に解決できないことを示唆した上で、「正しさ」の追求ではなく、今どうしても解決しなければならないことは何か、を選ばせているように思えました。

一方この作品は、その構造からみても興味深いものになっています。一連の事象は1997年以降に起こったものですが、2009年を映画内の"現在"と設定し、時系列を行き来しながら見ることになります。

また映画の視点は、この告発を世界に知らせるべく撮られたドキュメンタリー映画のスタッフに設定されています。つまり、「不正告発を行う」「ことを目的に撮られた映画」「を撮った映画」という超ややこしい構造なのです。

描写されている事実と映画の表現、両面でとても興味深い作品でした。
やわらか

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