デニロ

話す犬を、放すのデニロのレビュー・感想・評価

話す犬を、放す(2016年製作の映画)
3.0
高校生の頃、学校から帰りその日唯一の楽しみがNHKおかあさんといっしょの中の1コーナー「おはなしこんにちは」だった。語り部のおねえさんが不思議な物語を影絵や人形と共に(だったと思う)紡いでいた。小さな子どもの持つ感受性に訴えているんだと思うけど、とても不思議な番組だった。勿論、多感な高校生にも楽しめる番組だった。

数年後上京した際、北海道出身の友人に何かの折に番組の話をすると、あれは大人の見る番組だ、と大いに盛り上がった。

その語り部のおねえさんが若き日の田島令子。眼差しが怖いくらいに美しい人でした。本作では、昔飼っていた犬が見えるということからレビー小体型認知症だと判る役を演じている。その犬というのがこのストーリーの肝になっているもので、彼女と犬にまつわるストーリーが組み立てられている。田島令子を映画で観るなんていつのこと以来だろう。30年前の『人間の約束』でした。

かたや田島令子の娘役を演じるのは最高の美少女つみきみほ。彼女をスクリーンで見るのは13年ぶりだ。これはわたしが怠慢なだけで、彼女はそれ以降も何本も出ている。まるで本作のようだ。ここでは彼女は演劇人で、今は演技指導で生計を立てている。それなりに満足はしているが、かつての同僚だった男優が売れているのを見るにつけ、やはりそこはかとない寂寥感も湧いてくるようだ。財布の中も心許ないし。母親の面倒を見るために切羽詰まって演技に身が入らず、映画出演を断ってしまう。そんなことだから一流にはなれない、と自分でもわかっているんだけれど。

という母娘の掛け合いのような作品ですが、認知症ものにしては比較的緩やかなものです。ま、こうした状況はもはや日常になってしまってこんな風に穏やかにしないと観てもつらいばかりだ。
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