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軍旗はためく下にのnanaのレビュー・感想・評価

軍旗はためく下に(1972年製作の映画)
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35ミリ上映で鑑賞しました。
上映前には塚本晋也監督『野火』再上映のメッセージも。

戦場での厳しい戦いを描いたアクション系の作品かと思いきや、いきなり戦後、ひとりの女性が市役所にいるところから物語は始まります。
20年以上経った今も、敵前逃亡の罪で死刑となった夫の死因究明を続ける妻。

夫・勝男が死ぬことになった本当の理由は何だったのか。
妻が出会う人物は、何故か皆異なる彼の最期を語ります。
さながら『羅生門』のようですが、ここで勝男を演じる丹波哲郎が、ひとりの男の様々な在り方を演じ分けます。

語弊がありそうですが、思わず観客も一緒になって考えてしまう、ミステリーとしても一級に「面白い」作品。
戦争の苦しみは、その期間中だけではない。
例えその戦闘自体が終ったとしても、傷は残り続ける。
家族にも、遺族にも残り続けるのです。
戦争経験者がほとんどいなくなっている現在。
彼等の声を絶やすことなく伝え続けること、過ちを繰り返さないことが、今を生きる私達の使命なのだと改めて感じます。
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