Kamiyo

羊と鋼の森のKamiyoのレビュー・感想・評価

羊と鋼の森(2018年製作の映画)
3.5
2018年 ”羊と鋼の森” 監督 橋本光二郎 脚本金子ありさ

確かに映像は綺麗で、ピアノの音も素敵です
原作は未読 宮下奈都の小説「羊と鋼の森」が2016年本屋大賞他数々の大賞を受賞して作品を期待して観たが、
ピアノや調律の奥深さ、森や音に対する感性に富んだ
演出は感じられなかった。
それは、ピアノの音の質感、空気感、鍵盤を叩いたときの木などの音やずっしりした触感、押し返される感覚、
身体に受ける音の振動、滲む音、木の匂いなど、様々な要素があるが、この世界をあまり知らない人が表面をなぞったような浅いものであると感じた。

印象的ないい題名だ。羊毛でできたフェルトのハンマーが鋼の弦を打ち、絶妙の音が生まれる。
その由来からの題名だ。ピアノ調律師の物語と聞いて
実際は、ピアノ調律師外村直樹(山﨑賢人)の成長の物語。調律師という仕事の概要は理解している
一流の演奏家にとっては必要不可欠な職人であるとはわかりますが、なんとも地味な仕事で、普通はドラマの主役にはなりにくいと思います。
ピアノの音から森をイメージする。この非常に繊細なシーンの映像化はよく言えば深層心理の具体化、悪く言えば出来の悪い心や身体の癒しと言えそうだ。
いずれにせよピアノという楽器を繊細なものと感じられない人にはこの作品のテーマは理解できないと思う。

外村は進路に悩む高校生の時に、ピアノ調律師板鳥宗一郎(三浦友和)と出会い、運命的な決心をする。林業を営む緑に囲まれた外村家で、その決意を吐露する。
東京での2年の専門学校での勉強を経て、故郷に近い北国の町で、楽器店に入社する。
いちばん年齢が近く兄のような存在である先輩の柳(鈴木亮平)につき、調律師としての道を歩み始めた外村は、ある日、高校生姉妹、和音(上白石萌音)と由仁(上白石萌歌)に出会う。柳の調律したピアノを二人が弾くと、和音の音は端正で艶やかな音を奏で、由仁は明るく弾むような音色になるのだった。ときに迷い、悩みながらも、様々な経験を積み重ねる。
そして調律師の頂点に位置する板鳥が、業界の慣習を破って、ドイツの巨匠から直接調律の指名を受ける。
見事な仕事ぶりでコンサートは大成功となる。
そして柳の結婚式披露宴で、ピアノの調律を任された外村は、板鳥のようにコンサート・チューナーを目指すことを宣言する。
ボーイ・ミーツ・ガールもなく、あくまでも裏方の話に終始する。

ピアノコンクールに出場する有能な高校生姉妹のエピソードが多く登場した。正反対の性格をした高校生姉妹が新米調律師外村と関わったことでお互いどんな相乗効果があったのか。月並みなのは承知で恋心に触れて見せるのも一考だった気がする。
作り手がありふれた青春映画にしたくなかったのはわかるが、どこかで生真面目な息苦しさを感じた要因は通俗性を意図的に排除した点にあったのではないか。

高校まで音楽に触れてない人間が調律師になることがいかにあり得ないか、どうしてもこだわりを捨てきれなかった。音感 特に ピアノの調律に関しては
自分の耳に絶対的な自信がなくては 出来得ない。
その年までまったく音楽をしていなくても良い。
だったら音感をどこで手に入れたのか説得力ある理由を描かずに調律師の成長物語が始まる事に非常に違和感を感じる。。。。ピアノの演奏シーンや音楽は美しいが。

台詞にも難があるのでしょうが、やはり山崎さんの大根演技にも、問題があるように感じました。
物静かな演技は結構サマになっていましたが、時折どうしても顔を出す「大根そのもの」の演技が、観客である僕を強く苛立たせ、安心して鑑賞することを許してくれません。

ピアノの調律師にスポットを当てるという「斬新」さと、ピアノの「美しい旋律」そして北海道の「美しい風景」を楽しむ作品という印象です。
肝心の物語の内容は、僕がピアノに詳しくなかったのが原因かもしれませんが、いわゆる映画力(映画観たなぁという実感のようなもの)には乏しい。。
ピアノは響いたが、物語は響かなかった。
Kamiyo

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