わせ

赤線地帯のわせのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
4.5
《女》を撮ることに定評のある溝口健二。今までの作品よりも多くの女の生き様にフォーカスした本作は彼の遺作として相応しいものだと思った。普段の作品では長回しを多用するが、赤線地帯では動きのあるカメラワークが多い。それでも部屋の奥まで完璧なセットは相も変わらず、新しさはありながらも溝口の映画の良さは残ったままであった。宮川一夫の仕事ぶりに感服。自殺をしようとする夫、嬢に金を渡し結婚を夢見る男、そんな男を利用する嬢…。強い覚悟を持ったうえで吉原で働く女性と現状の生活に絶望をしている男性で考え方が真逆なのが良い、溝口の描く女、芯が揺るがなくて、強くて だいすき。やると決めた仕事は貫くし1度愛した男とは一生添い遂げるし。すこし気落ちしてしまう内容が多いけど、ミッキー役の京マチ子の存在のおかげで暗くなりすぎない、丁度いいバランス。若尾文子の甘い嘘にわたしも騙されてみたいし、木暮美千代の家庭を養う母親の強さも凄く格好良くて憧れる。みんな素敵だった。
わせ

わせ