櫻イミト

顔のない殺人鬼の櫻イミトのレビュー・感想・評価

顔のない殺人鬼(1963年製作の映画)
4.5
黒沢清監督が絶賛するゴシック風味のイタリアン・ホラー。原題は「La vergine di Norimberga(ニュールンベルクの乙女=中世の拷問器具”鋼鉄の処女”」。音楽は「世界残酷物語」(1962)のリズ・オルトラーニ。

終戦後十数年を経た現代のドイツ・ライン地方。新婚のアメリカ人女性メアリーは夫の実家である古城に初めて同行。夫の先祖は中世の死刑執行人で城内には”処刑器具の展示室”があった。その晩メアリーは女性の悲鳴を聞き、”鋼鉄の処女”から血が流れているのを発見する。。。

ゴシックな古城が好きな自分にとって冒頭から理想を絵にかいたようなロケーションが続出してニヤけてしまった。カラーによる古城の美術としては、拷問器具展示室のきらびやかさも相まって、今まで観てきた映画で最も素晴らしかった。すっかり期待値マックスになり、この後ダメ映画で終わらないように祈ったがいらぬ心配だった。次から次に不安なことが起こり、終盤も予想以上の秘密が明かされて、あっという間の84分だった。

画面に合っているのかどうかわからなくなるリズ・オルトラーニのゴージャスな音楽、脇を固めるクリストファー・リー、全く予想できなかった反戦要素と、久々に良い意味で裏切りまくってくれた。コスチュームや特殊メイクにも隙が無かった。ゴア描写は少ないが、女性の鼻をネズミに食いちらせる拷問はインパクトが強い。

イタリアン・ホラーとしては同年に最初のジャッロ「知りすぎた少女」(1963)をマリオ・バーヴァ監督が製作している。本作はゴシック調のためかジャッロ映画には数えられないようだが、個人的にはこちらのほうがグランギニョル成分が高く感じて好みだった。

ゴシックな古城で繰り広げられる猟奇ホラーなアトラクション・エンターテイメント。アントニオ・マルゲリーティ監督あなどり難し!他作品も順次観ていきたい。
櫻イミト

櫻イミト